森林国日本

穏やかな気候と自然に恵まれ私たちが快適にくらすことのできる国、日本。この日本の国土のおよそ2/3を森林が占めており、森林は材木の供給源となるだけでなく、様々な動物や植物のすみかとなり、また雨水を蓄え、浄化して川や海に流すことで田畑はもちろん近海の海産物資源を育てる役割も担っています。
また、日本の森林のほぼ半分は、人の手が樹木を植え管理する人工林となっています。人工林は、数10年〜数100年間、先代の人々によって植えられ、育てられて、伐採され、そしてまた植えられ、育てられ〜〜〜、この繰り返しが営々と続けられてきました。緑の山々を眺めながら「自然いっぱいでいいな〜」と感じるその森は、実は人の手が必要な「人工林」かもしれません。

豊かな日本を支える森林

人工林での植林は、良質な木材を作るために密集して苗が植えられます。そしてその木が育つにつれて、間伐したり枝を払ったりして木材としての価値を高めていきます。
間伐された木は木材として出荷され、残された木はさらに成長して次の世代へ受け継がれていくのです。
またこの作業により日光が差し込み動物や植物のすみやすい環境が保たれ、より広く根が張ることで斜面の土がしっかり保持され、土砂崩れなどの災害を防ぐとともに、栄養豊かな水を川を通じて海まで流すことができます。
すなわち山林を適切に管理することが、日本の国土と豊かな農業、水産資源を守ることになるのです。

林業の現状

そんな山林を守る林業ですが…現在、悲しいことに “どん底” です。
様々な理由がありますが、一番の理由は、木材の価格が安すぎるために、山林所有者はその整備をするための費用を捻出できず、林業としての採算が取れなくなったためです。価格が下がったのは、1960年代に木材が完全自由化されて海外から大量に安価な木材が流れ込んだためで
1980年代をピークに下落の一途を辿り、現在の山での立木価格は1980年の1/6〜1/7程度まで下がっています。
⇒ 林野庁「林業白書」

木材価格の推移：ピーク時(1980)の1/6（ヒノキ）、1/7（杉）にまで低迷。
このため、手入れされない「放置林」が増え、間伐、枝打ちが遅れて森林内に光が入らないため下草が育たず、豪雨の度に表土が洗われて木の根がむき出しになって山地崩壊を引き起こす災害を発生するなど、森林が荒廃しています。こういった「放置林」は日本全国に急速に広がっているのです。

間伐の遅れ：外は明るいのに森林内は真っ暗。表土が流されて木の根っこがむき出しに。
また、過疎化が進む山間地において、もう一つ大きな問題は、従来は人里離れた山地奥部に生息していたサル、鹿、イノシシなどの野生動物が山から下りてきて、森林および田畑を荒らす獣害を頻発するようになったことです。２０年前には人家周辺に出没することなど滅多になかった野生動物が、今では人家近隣に生息し、田畑を荒らし、森林の樹木を、それも樹齢８０年生のヒノキであっても根元を食い荒らすようになりました。根元が食い荒らされた樹木は木材としての商品価値が下がってしまって、営々と育て上げた先人たちの努力が無駄になり、林業への意欲が益々そがれる、という悪循環になっています。

獣害の状況：ヒノキの株周りが鹿によって皮が剥がされ無残な姿に。

⇒ 三重県における獣害の状況（PDF）